マリオット・インターナショナル(NYSE: MAR)が2026年5月6日に発表したQ1 2026決算は、EPSが予想を上回り、株価も好反応を見せました。「ホテルを1軒も所有しないのに世界最大のホテル企業」というユニークなビジネスモデルを持つマリオット。今回は決算の数字だけでなく、なぜこれほど安定して稼げるのかを深掘りしてみます。
直近の株価
2026年5月14日時点のMARの株価は$350.19です。
- 史上最高値(ATH):$380(2026年4月21日)
- 52週最安値:$250.01(2025年8月ごろ)
決算発表直後は+2.1%上昇し$354前後をつけました。現在はATHの約94%水準まで回復しています。年初来で見ると+40%以上の上昇で、S&P500をアウトパフォームし続けています。

Q1 2026 決算結果
| 指標 | 実績 | 予想 |
|---|---|---|
| 売上高 | $6.65B(+6.2% YoY) | $6.62B |
| 調整後EPS | $2.72(ビート、+$0.14) | $2.58 |
| 調整後EBITDA | $1.4B(+15% YoY) | — |
| グローバルRevPAR | +4.2% YoY | — |
公式プレスリリース:Marriott International Reports First Quarter 2026 Results
EPSは前年同期の$2.32から+17%成長しており、増益ペースが加速しています。売上は予想をわずかに上回る水準で、大きなサプライズではないものの安定感のある着地でした。
RevPARとは何か、なぜ重要か
ホテル株を読むうえで必ず出てくる指標がRevPAR(Revenue Per Available Room)です。「1室あたりの収益」で、計算式は「稼働率 × 平均客室単価(ADR)」です。
単純な稼働率だと「値引きして客を詰め込んでいる」のか「高値を維持しつつ満室」なのかが区別できません。RevPARが上がるということは、単価を落とさずに稼働率も維持できているということで、ホテルの実力を最もよく示す指標です。
今回のQ1 2026のRevPAR成長率:
| 地域 | 成長率 |
|---|---|
| グローバル | +4.2% |
| 米国・カナダ | +4.0% |
| アジア太平洋 | +4.6% |
| 中国(香港・海南島含む) | +5.9%(一部+20%超) |
| 中東 | ▲30%以上(3月) |
中東が3月に急落しており、Q2はさらに約50%落ち込む見通しです。地政学リスクの直撃ですが、マリオット全体への影響はグローバルRevPAR成長の100〜125ベーシスポイント押し下げ程度と試算されており、他地域の好調さでカバーできています。
なぜ「ホテルを持たない」ほうが稼げるのか
マリオットの物件所有比率は全体の1%未満です。ほとんどはフランチャイズ契約または運営委託(マネジメント契約)で、建物はREITや個人オーナーが持ちます。マリオットはブランドと運営ノウハウを提供するだけで手数料を受け取る構造です。
| 収益源 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| フランチャイズ手数料 | 売上の5〜7%を受け取る | 主力収益、固定費ゼロ |
| 運営管理手数料 | 売上の2〜3.5%を受け取る | 運営品質が問われる |
| Bonvoy(ロイヤルティ) | ポイント販売・クレカ手数料 | 急成長中 |
建物を持たないため、旅行需要が落ち込んでも固定費(減価償却・金利)の重みがほとんどありません。2020年のコロナショック時も、所有型ホテルが壊滅的な打撃を受けた一方で、マリオットはフランチャイズ手数料が落ち込んだだけで乗り切りました。景気変動への耐性が構造的に高いのです。
Bonvoyクレカ手数料+37%が示すもの
今回の決算で見逃せないのが、Bonvoy共同ブランドクレジットカードの手数料収入が前年同期比+37%成長したという点です。
Bonvoyは現在2億8,300万人の会員を抱えています。アメリカン・エキスプレスやChaseと組んだ共同ブランドカードを通じて、カード会社がマリオットにポイントを購入する形で手数料が発生します。会員がホテルに泊まらなくてもカードを使うだけで収益が入るため、RevPARが落ちる局面でも下支えになります。
開発パイプラインも過去最大で、現在約618,000室が開発中です。Bonvoyのブランド力が強いほどフランチャイジーが加盟を希望するため、ブランド価値と拡大速度が連動する好循環が続いています。
競合との比較
| 指標 | マリオット(MAR) | ヒルトン(HLT) | ハイアット(H) |
|---|---|---|---|
| 物件数 | 約9,926 | 約8,300 | 約1,350 |
| 客室数 | 約238万室 | 約129万室 | 約32万室 |
| ロイヤルティ会員数 | 2億8,300万 | 1億8,000万 | 5,000万 |
| Q1 RevPAR成長 | +4.2% | 同程度 | 非公表 |
ヒルトンが最も近いライバルですが、客室数ではマリオットが約2倍あります。ハイアットはラグジュアリー特化で高単価路線を維持しつつ、規模は小さいです。
スケールで最も効いているのがロイヤルティプログラムです。会員数が多いほどクレカ会社との交渉力が上がり、手数料単価も上昇します。ヒルトン・ハイアットに対するマリオットの優位性は、このBonvoyエコシステムの厚みにあります。
FY2026ガイダンス
| 指標 | ガイダンス |
|---|---|
| グローバルRevPAR成長 | +2〜3% |
| 調整後EBITDA | $5.88B〜$5.97B |
| 調整後EPS | $11.38〜$11.63 |
| 株主還元(自社株買い+配当) | $4.4B以上 |
| ネット客室数増加 | +5%前後 |
EPS成長率は+14〜16%を見込んでおり、高成長が続く見通しです。アナリストの反応も良好で、JefferiesはPTを$415に、Wells FargoはPTを$403に引き上げています。
リスク:中東と景気後退
懸念点は2つあります。
1つ目は中東の地政学リスクです。中東は欧米系ホテルにとって高単価市場で、RevPARが50%落ちると収益への影響は無視できません。Q2にかけて影響が続く可能性があります。
2つ目は景気後退懸念です。マリオットの売上の相当部分が法人向けビジネス出張です。景気後退局面ではビジネス出張需要が先に落ちるため、RevPARが想定より下振れるリスクがあります。ただ、アセットライトモデルのため固定費は軽く、過去の実績を見ても景気後退時の耐性は業界平均より高いです。
まとめ
マリオットのQ1 2026は、EPSビート・RevPAR成長・クレカ手数料の急伸と、アセットライトモデルの強みが数字に表れた決算でした。
中東リスクは引き続き注視が必要ですが、旅行需要の底堅さとBonvoyエコシステムの成長が確認できた内容です。
「建物を持たないホテル企業」という逆説的なビジネスモデルが、長期的に非常に競争力を持つことを改めて確認できました。
この銘柄もデルタ航空と同様にリベンジ消費銘柄に近いです
今後エネルギー危機が良い方向に転換したら、買ってみるのが良いかなと思っています
今の所、インフレがしつこく継続しそうなところがマイナスですね
ただ一方でK字型社会で一部富裕層は儲かってそうですので
富裕層向けのサービスとしてうまく回るならいいかなと思っています



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