エクソンモービル(XOM)26年Q1 決算良し。中東危機をどうとらえるか

XOM

エクソンモービル(NYSE: XOM)が2026年5月1日に発表したQ1 2026決算は、調整後EPSが予想を15%上回る大幅ビートでした。
しかし株価は発表後に約4%下落。その背景には、史上最大規模の中東危機によって生じた会計上のノイズと、長期的な成長ストーリーのギャップがあります。
これらと中東危機が原油市場とXOM株価に与えた影響を時系列で整理しながら深掘りします。

直近の株価

2026年5月7日時点のXOMの株価は$154.88です。

  • 史上最高値(ATH):$176.41(2026年3月30日)
  • 52週最安値:$101.19(2025年5月ごろ)

年初から中東危機を背景に原油が急騰し、3月末にATHをつけた後、和平交渉への期待から原油安・株安へと転じています。現在はATHから約12%下の水準です。

XOM 株価チャート

Q1 2026 決算結果

公式プレスリリースはこちらから。結果は良かったです
ExxonMobil Announces First Quarter 2026 Results

指標 実績 予想
売上高 $85.1B(+5% YoY) $81.2B
調整後EPS $1.16(ビート、+14%) $1.02
GAAP純利益 $4.2B(▲45% YoY)
営業キャッシュフロー $8.7B
株主還元総額 $9.2B(配当$4.3B+自社株買い$4.9B)

なぜ「利益▲45%なのにEPSビート」なのか

決算見出しだけ見ると「純利益が前年の$7.7Bから$4.2Bへ45%減少」という数字が目に飛び込んできます。しかし、これは会計上の一時的な影響が大きく乗っています。

最大の要因はデリバティブのタイミング損失です。ホルムズ海峡封鎖で実際の原油出荷ができなくなった一方、関連するヘッジポジションが時価評価で約▲$3.3Bの損失を計上。
さらに中東関連の「識別項目」として▲$706Mが加わり、合計約▲$4B超が一時的な特殊要因です。

これらを除いた実力ベース(識別項目・タイミング効果を除く調整後)の利益は$8.8B(EPS $2.09)で、前年同期とほぼ横並びです
調整後のEPSビートはこの実力値が予想を上回ったことを反映しているわけですね。

中東危機が株価を揺らした3ヶ月間

今回の決算を理解するには、2026年初頭から続く中東危機の文脈が不可欠です。

日付 出来事 原油(ブレント) XOM株価
2026年1月 中東緊張が徐々に高まる $61/バレル前後 $120〜130台
2月28日 米・イスラエルがイラン核施設を攻撃(Operation Epic Fury)。ホメイニー師暗殺 $83超(急騰) $159前後
3月2日 イランがカタールのLNG施設を攻撃。QatarEnergyが生産停止 $103(月平均) 上昇継続
3月24日 QatarEnergyがLNG契約で不可抗力(Force Majeure)を宣言 $115〜118 高値圏
3月30日 XOM史上最高値 $118前後 $176.41(ATH)
5月1日 Q1 2026決算発表。EPSビートも株価は小幅下落 $116 $153〜154
5月4〜5日 ホルムズ海峡で再び衝突。原油が$120に迫る $120近辺 高値圏
5月6日 米・イラン和平交渉が進展との報道。原油が急落 $93以下(WTI▲9%超) $151前後(▲4%)

ホルムズ海峡の封鎖は2月末から続いており、5月7日時点で68日超にわたっています。
世界の石油海上輸送の約25%、LNGの約20%がこの海峡を通過するため、影響は甚大です。
カタールのLNG施設攻撃で世界LNG供給の約20%が失われ、ヨーロッパのガス価格は+50%、アジアでは+39%上昇しました。

一方で5月6日には、米・イランが停戦・核合意に向けた「1ページのメモランダム」で最終調整中との報道が流れ、原油が急落しXOM株も連れ安となりました。
現在はまさに「解決するのかしないのか」という最大の不確実性の中にあります。

XOMにとってこの危機は一面ではプラスです。原油価格の高騰は上流(アップストリーム)収益を押し上げ、ATH更新につながりました。しかし同時に、ホルムズ封鎖が継続すればQ2だけで▲75万バレル/日の生産損失が発生するとも試算されており、両刃の剣となっています。

Pioneer買収シナジーが目標の2倍に

2024年5月に$60Bで完了したPioneer Natural Resources買収は、今や「XOM史上最高の買収」と評されつつあります。
この企業はエネルギーの探査・開発などをする企業でして当初掲げた年間シナジー目標は$2Bでしたが、Q1 2026時点で$4B/年に達し、目標の2倍を超えました。

主な貢献はパーミアン盆地の生産効率化です。「キューブ開発手法」をPioneer取得鉱区に適用した結果、パーミアン生産量は前年比+25万BOE/日増の170万BOE/日に到達。2030年には230万BOE/日が目標です。

指標 Q1 2026 2030年目標
パーミアン生産量 170万BOE/日 230万BOE/日
Pioneer買収シナジー $4B/年
累計コスト削減額(2019年来) $15.6B $20B

ガイアナ沖:世界最大級の油田開発が加速

XOMが開発するガイアナ・スタブルックブロックの生産量が、Q1 2026に90万バレル超/日(四半期ベース過去最高)を記録しました。
推定埋蔵量は111億バレル以上とされる巨大油田で、権益はXOM(41.9%)、Hess(32.1%)、CNOOC(25%)。開発コストが低く、原油価格が下がっても採算が取れる高品質な資産です。

2026年後半には第5のFPSO(浮体式生産貯蔵積出設備、25万バレル/日)が稼働予定で、生産はさらに拡大します。2030年代にかけて段階的に増産する長期計画であり、XOMの将来キャッシュフローの中核となっています。

Golden Pass LNG:新しい収益の柱が始動

2026年4月、ルイジアナ州のGolden Pass LNG Terminal(Train 1)が初の輸出貨物を積み出しました。 米国のLNG輸出能力を5%押し上げる規模で、2026年末にはTrain 2の完成も予定されています。

日本の企業だと千代田化工建設が関わっていましたね。大幅な遅れと赤字で大変だったと思います。

LNGは長期契約で安定収入を得やすいビジネスです。カタールLNG停止で欧州・アジアの需要がひっ迫しているなか、米国でのGolden Passの稼働タイミングは戦略的に絶妙でした。

ガイダンスと株主還元

指標 内容
設備投資(CapEx) $27〜$29B(据え置き)
Q2配当 $1.03/株(6月10日支払い予定)
2030年目標(現在価格前提) 利益+$25B・キャッシュフロー+$35B
アナリスト平均目標株価 $166(現在比+7%)

Q1の株主還元総額は$9.2Bで、稼いだキャッシュのほぼ全額を株主に還元した計算です。配当は長年増配を続けており、インカム投資家からの支持が厚い銘柄でもあります。

まとめ

XOMのQ1 2026は、表面の数字(純利益▲45%)と実態(EPSビート、実力利益$8.8B)のギャップが大きい決算でした。そのギャップを生んだのが、ホルムズ海峡封鎖という史上例のない地政学イベントです。

中東危機の解決如何によって、XOM株は大きく方向性が変わります。和平合意が成立すれば原油安→株安の圧力、長期化すれば原油高→株高の方向です。
ただ、どちらのシナリオでも、Pioneer買収効果・ガイアナ増産・Golden Pass LNG始動という長期成長の柱は変わりません。短期の値動きに振り回されず、実力を見極めたい銘柄です。

長期で見ればLNGもますます必要になっていきますし
もはや脱炭素とか言ってられないような世の中です

米国のLNG,特にアラスカLNGがいずれ動くと言われている中で
巨大な企業のXOMは持っておく価値があるかもしれないと思います

個人的には、イラン情勢が割とクリアに先行き見えるようになって下落したときに仕込みたいですね

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