アラスカ航空(ALK)Q1 2026決算:イラン戦争の燃料危機と他社比較

ALK

2026年に入って航空業界は大きな試練に直面しています。
イランとの軍事衝突を発端とした原油価格の急騰が、各社の収益構造を根底から揺さぶっており、5月にはSpirit Airlinesが全便運航停止という形で最初の脱落者が出ました。
そのなかでのアラスカ航空(ALK)のQ1決算は難しく
「独自の強みを持ちながらも、燃料ショックに対して最も無防備な立ち位置にいる」といった感じでしょうか

アラスカ航空Q1 2026決算

Q1 2026 Earnings Release(SEC)
売上高は$3.3B(前年比+5%)と悪くない数字ですが、中身は厳しかったです。

  • GAAP純損失:$193M(純利益率 -9.6%)
  • 調整後EPS:-$1.68(市場予想 -$1.32〜-$1.58 を下回る)
  • Q2燃料見通し:$4.50/ガロン前後 → 追加コスト約$600M
  • Q2 EPS見通し:-$1.00(再び赤字)
  • 通年ガイダンス:取り下げ

燃料コストがQ1平均$2.98から$4.50に跳ね上がった場合、それだけで$600M規模の費用増です。
加えてハワイの記録的な嵐とプエルトバジャルタの治安悪化による需要蒸発が追い打ちを掛けました。この2エリアで全キャパシティの約30%を占めているため、打撃が集中しています。

株価

ALK株価チャート

直近株価は$40.07(5月20日)。52週レンジは$33.03〜$65.88で、高値から約40%下落した水準です。5月20日は前日比+11.2%と急反発しており、売られすぎからのリバウンドが出ています。
アナリストの平均目標株価は$57〜$62と、現在の株価から40〜55%の上値余地を示しています。

イラン戦争が航空業界を直撃

2026年初頭からの米・イラン軍事衝突でホルムズ海峡の通航船舶が平常時の約1割まで激減。世界の原油供給に直撃し、米国内のジェット燃料価格は2月末の$2.50/ガロンから4月初旬には$4.88/ガロンへとほぼ倍増しました。WTIは$100を突破し、Unitedは「少なくとも2027年末まで$100超が続く」と見ています。

ちなみに5月2日、この燃料高に耐えきれなかったSpirit Airlinesが全便運航停止しています。再建計画が想定していた燃料単価$2.24に対して実際は$4.51と倍以上になっており、低マージンのLCCが真っ先に脱落する構図になっています。

大手各社との比較

同じ燃料高の嵐のなかで、各社の状況はかなり違います。

Delta(DAL)は今回最も「強い」決算を出しました。Q1売上$14.2B(四半期最高)、調整後純利益$423M。
子会社のMonroe Energyが1日18万5千バレルを処理できる製油所を保有しており、燃料需要の40〜50%をここで自前調達できるからです。金融ヘッジではなく「現物を自分で作る」という構造で、今回のような燃料スパイク局面で圧倒的に有利に動きます。
ただしそのDeltaも「Q2燃料費は$2B増」と警告しており、コストの50%は運賃値上げで転嫁する方針を表明しています。

United(UAL)はQ1売上$14.6B(+10%)、調整後EPS$1.19(+31%)と好決算でしたが、通年ガイダンスを$12〜$14から$7〜$11へと大きく引き下げました。
燃料ヘッジはゼロで、Q1だけで前年比$340Mの燃料費増を食らっています。プレミアムキャビン・長距離路線の比率が高いため、燃料高の一部を高単価の座席販売で吸収できる点がアラスカより有利です。

American(AAL)はQ1売上$13.91B(過去最高)、調整後損失$0.40/株と予想より良かったものの、通年ガイダンスを-$0.40〜+$1.10という幅の大きいレンジに修正。燃料費の年間追加負担は$4B超と試算しています。

大事なのは燃料ヘッジの有無ですね
Delta以外の米大手航空会社はほぼ全社が金融ヘッジを放棄しています。American CFOが「ヘッジのプレミアムコストは長期的にリターンを上回らない」と述べているとおり、平時の低ボラティリティ環境ではヘッジは割に合わないと判断されてきました。
しかし今回のような地政学リスク起因の急騰では、その判断が全社の収益を直撃する形になっています。

アラスカ航空の独自構造:弱点と強み

アラスカが他社と大きく異なるのは、ロイヤルティプログラムの収益比率の高さです。2024年9月にハワイアン航空の買収を完了し、2025年10月に両社のポイントプログラムをAtmos Rewardsとして統合しました。
Bank of Americaとの長期クレジットカード契約も更新・拡大しており、BofAがAtmos系カード全体の単独発行体になる方向で交渉が進んでいます。Q1 2026のロイヤルティ関連収益はすでに$238M(前年比+6%)と堅調で、この部分は燃料コストの影響を受けにくい安定収益源です。旧Mileage Planは売上の17%を稼いでいた(ハワイアンのHawaiianMilesは9%どまりだった)という実績があり、統合による底上げでさらに$150M超の利益増を狙っています。

ただし同時に、ハワイアンを取り込んだことでハワイ路線への依存が高まったのが今回の弱点でもありました。
Deltaのように長距離国際線・プレミアムキャビン収益で燃料高を吸収できる体力がなく、Unitedのようなグローバルなルート分散もない。西海岸・アラスカ・ハワイという地域集中型の路線網は平時は強みですが、特定エリアへの需要ショックには脆弱です。

どう見るか

短期的には、Q2も赤字が確定的です。$4.50/ガロン前後の燃料コストが続く限り、どこかで運賃への転嫁が進まない限り改善は見えにくい感じです

中長期で見ると、Atmos Rewardsの本格成長と統合シナジー($150M+)がどこまで燃料コスト増を吸収できるかが焦点になります。アナリスト16人がStrong Buyを維持している根拠もここにあって、「ロイヤルティビジネスとして見ると現在の株価は割安」という論理です。イラン情勢が落ち着いて燃料が正常化すれば、一気にレバレッジが効く形になります。

個人的にはすぐに手を出す気にはなれないですが、イランとの停戦・燃料価格の落ち着きを確認してから入るのが現実的かなと見ています。
52週高値$65.88から40%下の水準は、ロイヤルティ収益の成長ストーリーが生きているうちはそれなりに仕込みのチャンスだとは思います。

もう少し様子を見ていきたいですね

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