Zscalerが5月26日にQ3 FY2026(2〜4月期)の決算を発表しました。
売上もEPSもビートして、ガイダンスも上方修正。しかしアフターで-16%という結果でした。
どんな企業か
2007年創業のサイバーセキュリティ会社です。「ゼロトラスト」という概念のパイオニア的存在で、一言でいうと「VPNをクラウドで置き換える」会社です。
従来は社内ネットワークに繋げばあとは信頼するというVPNモデルでしたが、クラウド移行が進むとこれが合わなくなってきます。
Zscalerは「場所を問わず通信を毎回検査・認証する」というアプローチで、SaaSや社内システムへのアクセスをVPNなしで安全に提供します。
セキュリティの新しいやり方を提げて2018年にIPO、公募価格は$16でした。
主要製品は3つです。
ZIA(Zscaler Internet Access)はインターネットへのアクセスをZscalerのクラウド経由でフィルタリング・検査するセキュアWebゲートウェイ
ZPA(Zscaler Private Access)はVPN不要で社内システムやクラウドアプリへの接続をアプリ単位で制御するもので、一つ侵害されても横展開されにくいのが特徴です
ZDX(Zscaler Digital Experience)はユーザーの体感速度や接続品質をモニタリングするツール。これら全体を「Zero Trust Exchange」というプラットフォームとして提供していて、フォーチュン500の大半が使っているとされています。
Q3 FY2026決算(2〜4月期)

| 結果 | 予想 | |
|---|---|---|
| 売上高 | $850.5M(+25% YoY)✅ | $835.7M |
| 非GAAP EPS | $1.08 ✅ | $1.01 |
| ARR | $3.525B(+25% YoY)✅ | — |
| 非GAAP営業利益率 | 23%(過去最高)✅ | — |
| フリーキャッシュフロー | $136M(+14% YoY) | — |
→ ZS Q3 FY2026 決算プレスリリース(SEC 8-K)
数字自体はすべてビートです。ところがガイダンスのFCFマージンだけが問題でした。
| 新ガイダンス | 旧ガイダンス | |
|---|---|---|
| 売上高 | 約$3.33B ↑ | 約$3.32B |
| 非GAAP EPS | $4.10〜$4.11 ↑ | $4.05〜$4.06 |
| ARR | $3.740〜$3.749B ↑ | $3.730〜$3.739B |
| FCFマージン | 22.8〜23.3% ↓ | 26.5〜27% |
FCFマージンだけ3〜4ポイント引き下げです。
売上・EPS・ARRは上げているのにキャッシュ創出だけ落とすのは積極投資のサインでもありますが、市場はキャッシュが減るという面だけを嫌いました。
FY2027の初回ガイダンスは売上$3.87〜$3.93B(+16〜17%成長)で、成長継続の意思は示しています。
株価の動きと流れ
2018年のIPO価格$16から始まり、コロナ禍でのクラウドシフト・リモートワーク普及でZscalerの需要が一気に広がりました。
2021年には$370台まで上昇し、その後$100台まで大きく落ちてから2025年に再び上昇。2025年11月3日に$336.99という52週高値をつけました。
ところが2026年に入ってから下落が続き、今年3月には$139まで落ちています。
同じセキュリティセクターでもCrowdStrikeは昨年のシステム障害から完全復活して$650台、Palo Alto Networksも高値圏にいる一方、ZscalerとSentinelOneは低迷が続いています。
| 銘柄 | 現在値(5/28) | 状況 |
|---|---|---|
| CrowdStrike(CRWD) | $657.67 | 強い、高値圏 |
| Palo Alto Networks(PANW) | $248.77 | 52週高値近辺 |
| Fortinet(FTNT) | $128.26 | 堅調 |
| Zscaler(ZS) | $126.41 | 決算翌日-31.5% 52週高値から-62% |
株価急落の背景にはFCFマージンの引き下げだけでなく、セールスリーダー2名の離脱も影響しています。CFOのKevin Rubinは「幹部交代期間中は慎重なアプローチをとる」と述べており、営業体制の不安定さも嫌気された形です。
またセクター全体のテーマとしては、今年4月にAnthropicがリリースしたClaude Mythos Previewが話題になっています。
主要OSやブラウザの脆弱性を自律的に発見し83%以上のケースで初回から動作するエクスプロイトを作成できるというもので、「脆弱性の発見から攻撃まで数ヶ月かかっていたものがAIで数分になった」といわれています。安全性テスト中に制御されたサンドボックスを脱出してインターネットに接続したという話もあり、AIと攻撃ツールの関係は新しい局面に入っています。
Zscalerはこの流れに対してProject Glasswingを通じてMythosを自社のセキュリティ開発に組み込む立場をとっています。
攻撃が高度化するほどゼロトラストの必要性が増すという文脈で、長期的には追い風になりえます。
どう考えるか
ARR25%成長・営業利益率23%はSaaS銘柄として十分な数字ですし、ゼロトラストのポジションはAI時代にむしろ強くなっています。
FCFマージンの引き下げが一時的なものか構造的なコスト増なのかは次の四半期が重要で、CRWDやPANWと比べてバリュエーション的には割安感が出てきているのは確かです。
ただIPO以来の10年CAGRが22%という銘柄で、成長期待がまだ大きく折り込まれている水準でもあります。もう少し様子を見ていきたいですね。



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